日本橋神経クリニック

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Epilepsy

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Epilepsy てんかんのある人の日常生活

1)発作の誘発因子

一般的に発作の誘発因子と言われてものには、発作を起こしやすくする状況と、発作を起こす特定の刺激の2種類があります。

ご自身に誘発因子があると感じたとします。誘発因子に気が付くことはとても大切なことです。しかし、いきなりそれを避けるのではなく、そのことで本当に発作が誘発されたのか、それとも偶然の一致だったのか確認することが2番目に大切です。確認するためには発作表などを利用して、発作と誘因と思われる事柄を記録します。真の誘因を洗い出し、意味ある制限を課します。必要な制限を守り無用な制限を避けることは、結果的に制約の少ない生活を手に入れることになります。

1-1)発作の起こりやすい状況

てんかんのある人の日常生活

以下に個々の状況について解説しますが、若年ミオクロニーてんかんと睡眠の関係などを除くと、多くの場合、下記の状況が単独で発作を起こしやすくするというより、複合的に作用して発作が起こっているように感じます。その組み合わせや関与の程度など人により異なるので、ご自身の経験から教訓を得る必要があります。

睡眠不足

睡眠不足単独で発作が起こりやすくなる人がいます。代表は若年ミオクロニーてんかんの患者さんですが、状況は人により異なります。ある人は「午前3時過ぎに寝ると、翌朝必ずけいれん発作が起こる」とおっしゃいます。別の人は「3日以上1時過ぎまで起きているとけいれんが起こる」とおっしゃいます。ご自身のパターンを知り、それを避けることが大切です。

体温上昇

神経の膜は、急激に体温が上昇する際に不安定になることが知られています。このことが直接症状に現れたのが、小児期に見られる熱性けいれんです。てんかんのある人の中にも体温上昇時に発作が起こりやすい人がいます。多くの場合、体温の上昇にともない発作が起こり、上がりきってしまった状態ではあまり起こりません。そのため、高熱の人に坐薬などを使用して無理に体温を下げた場合、再上昇するのにともない、けいれんを起こす機会を人為的に作ってしまうことになります。体温調整は慎重に行う必要があります。

体温上昇は、感染症の時だけではありません。入浴も同じです。入浴時間を短くする、シャワー浴にするなど工夫をします。直腸温を調べた結果、湯から上がってからも体温は上昇し続けていることが分かっています。湯上りで着替えている最中に発作が起こると聞くのは、このためだと思われ、湯から上がってからも注意が必要です。屋外で直射日光を浴びたり、屋内でも真夏の暑い日など環境温の上昇でも体温は上昇します。ドラベ症候群の方のように、特に体温上昇に敏感なてんかんのある人でも、タオルて作ったマフラーに冷却材を入れて首に巻くなどの工夫することで、夏でも屋外に出ることができます。

精神生活上の問題

精神的緊張が長く続くと発作が起こりやすくなる人がいます。日中出かけるところがなく、家で何もするでもなくボンヤリTVを見る生活を起こっていた人が、作業所に通うようになったら、発作がピタリと止まり、薬も減らすことができ、その結果眠気やふらつきの副作用もなくなったという、夢のような話を聞いたことがありますが夢ではありません。事実です。何人もそのような人を見てきました。昼間活動することがいかに重要か教えてくれます。

身体的疲労

過度の疲労も誘発因子になることがありますが、たとえば登山、サッカーやバレーボール、マラソンを行なっている最中にというより、何日もハードな部活の練習をするといった状況で起こりやすいように思います。

飲酒

アルコールは神経の活動を抑制する物質ですから、てんかんには悪くないように思われます。事実発作は、飲酒の最中ではなく、飲酒後しばらくしてから起こります。夕方飲酒したとしたら、明け方布団の中でけいれんを起こしていたといったパターンが多いように思われます。アルコールは抗てんかん薬に比較して冷めるのが早いため、抑制が急激になくなったことの反動で発作が起こるのかも知れません。アルコールは、社会通念上摂取する必要のある時以外は避けた方が無難ですが、発作の起こりやすさは人により異なります。

抗てんかん薬の急激な変更や中断

服用中の抗てんかん薬を減量する際には、医師の指示に従い計画的に行う必要があります。突然中止すると、てんかん重積状態といって、多くの場合けいれん発作が止まらなくなり、救急処置を要すことがあります。飲み忘れも発作を起こりやすくする状況のひとつです。飲み忘れに気が付いたら、食後服用などの指示に構わずすぐに服用してください。そのためには予備の薬を常に持ち歩く必要があります。災害時に家に帰れないことも考慮したら3日分程度を持ち歩くとよいでしょう。災害に備えて、職場などに3~4日分常備しておくこともお勧めします。

抗精神病薬や抗うつ薬

ある種の抗精神病薬や抗うつ薬、抗アレルギー剤がてんかん発作を誘発することはよく知られていますが、実際の頻度はそれほど多くありません。これらの薬を服用する必要がある場合には、避けるのではなく注意深くはじめればよいと思われます。いきなり大きなけいれんが起こるというより、いつもの発作が増えることが多いように感じています。

1-2)反射性に発作が起こる

発作の誘因

表2にまとめました。いずれも特定の人に関連するもので、多くの人は関係ないので過敏になる必要はありません。該当する刺激が、間違いなく発作を起こすとしたら、その刺激は極力避ける必要があります。難しいのはゲームで発作が誘発される場合です。ゲームで発作が誘発されたからと言って、すべてのゲームで誘発されるわけではありません。発作を誘発したゲームの種類や誘発された場面などを特定し、光の点滅、判断、手指の使用、遊んだ時間などから発作を誘発した要素を推定することで、ゲーム全般を禁じなくもて済むことがあります。

2)スポーツ

 スポーツは一般的に発作を遠ざけます。精神的リフレッシュ効果もあり、てんかんがあっても可能な限り積極的にスポーツは取り入れることが大切です。反面、危険もともなうので、リスク管理も必要です。日本では長尾秀夫先生の学校生活の管理表が有名です。スポーツの経験度と発作の危険度を組み合わせることで、具体的にどのような種目を行うことが可能か判断する時の参考にします。

3)自動車運転免許

運転基準

日本で運転免許(普通免許)を取得するためには、2年以上発作が止まっている必要があります(表3)。例外として、日中の運転に支障をきたす発作が2年以上抑制されている前提のもと、意識が保たれている発作(単純部分発作)が1年以上続いている場合と、夜間睡眠中の発作が2年以上続いている場合が挙げられます。
大型、中型、準中型、2種免許は、薬を中止して5年以上発作が抑制されている場合に認められます。

その他、日常生活に関することは、てんかん日記の方に徐々に追記します。MOSESでは、このような情報も身に着けることができます。